情報誌「ネルシス」 vol.10 2009

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P-02[特集]観光とまちづくり

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クールジャパン、あるいは浅草の迷宮
今、浅草が活気づいている。
クールジャパンのブームで外国人観光客が増加し、
浅草寺には年間3000万もの人々が訪れる。
江戸の意匠は日本の若い世代にもクールであり、仲見世には浴衣姿の男女が集い、
宝蔵門から本堂への参拝の流れは絶えることがない。
かつて江戸時代の浅草は文化とファッションの中心であり、
歌舞伎役者や花魁(おいらん)はトップアイドルであった。
しかしその過剰な絢爛の楼閣は明治以後の欧米化の波間に消滅していった。
クールな「粋」は文字どおり「冷」となり、オタクによる倒錯的な欲望の転換のなかで、
アニメやゲームに様変わりしながらアキハバラへ向かう。
手塚治虫はマンガの世界にはタブーがないと語っていたが、
その過剰な冷力は世界へ進出するカルチャーへと発展した。
それらの仮想的なファンタジーとエロスの源泉は、
遠い江戸時代に浅草寺の裏手の闇にリアルとして存在していたともいえる。
浅草の迷宮は今まだ続いているのである。
文・写真…シヲバラ タク