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もとあった井戸のメタファーとして、3つの噴水が創られている。「記憶の井戸」といわれる「宙の広場」にある主噴水は、記憶のレイヤーを石の層として表現し、その間に再生のシンボルとしての水を流した装置である。「迷宮の井戸」は水路の水の源として、吹き上げるピラミッド型の水の乱舞が迷宮の水路を流れ、時の流れの不思議な様を表す。「水釜の井戸」では、悠久の時の流れを、鏡面上にうすく張った水盤の水が石壁をつたって流れる水に託している。これら噴水からの水は水路を流れて循環されている。3つの百年以上忘れられていた「井戸」はみごとに再生された。
蔵跡は「座のオブジェ」の一つとしてよみがえり、また敷地から発掘された掘割に使われたと見られる間知石や土台として使われていた石は、それなりの時の風情を今に残す、 |
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「座のオブジェ」としてベンチへと役割をかえ舞台装置の小道具として演出に一役買っている。
「芝さつまの道」全長150m、幅25mは面として考え、畳のモデュールである「1:2」を入れ子状にパターン化し、石畳として解いた。その石畳を切って大きく流れる風の軸は、そのゆるやかな曲線で「芝さつまの道」の面に柔らかさを与えると同時に、日比谷通りとの微妙なズレをデザイン的に解消している。
風をコントロールし、緑陰の快適さを演出する三連に刈り込んだ樹木は、この地にしかない風情で、幾何学的に十文字に刈り込んだ低木とともに緑の舞台装置を創っている。
卵型に切り取られた仮想空間は、「宙の広場(セレスティンプラザ)」と名づけられ、「芝さつまの道」の中心として、天と地を結ぶランドスケープの |
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コンセプトの真髄を表現している。 昨年の春に、ここに入られるホテルの名が偶然にも「セレスティンホテル」と聞いたときの驚きは想像を絶するものがあった。外部空間のコンセプトと内部ソフトとの一致である。ホテル側の驚きもひとしおで、それからのホテルの方向性も「芝さつまの道」との関わりを深める方向に、大きくシフトしたと聞いている。
舞台装置は出来上がった。この空間と運営と演出が一体となったとき、この新しく生まれ変わった街は、生き生きと次世紀へ、あらたな「土地の記憶」を刻していくことになろう。ここで働き、生活し遊ぶ主役の演技者たちが悠久の時の流れと「やすらぎ」を感じてもらうことこそ私たち創り手にとって限りない喜びである。 |
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