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リーダー養成講座の実習風景。メンバーのほとんどは大学生。夏休みのキャンプの前には必ず実際のルートを体験しておく。川に飛び込んで深さを確かめたり、キャンプ生活での出来事をシミュレーションしている。安全確認だけでなく、いかに子どもたちが楽しく過ごせるかを考えるのも重要な役割の一つ。【写真右上】中央の人物はリーダー候補生を指導する山田辰美さん
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情報化社会の現代、大人に限らず子どもたちも多くの知識を持っている。 緑豊かな自然もテレビ画面から間接的に頭の中で経験し、理解したつもりでいる。
でも、それはやはり仮定の自然でしかなく、例えば絵の中の水に触れても冷たくないように、 自然も体験しなければその素晴らしさは実感できない。 自然のなかに飛び込み体験することで、今まで知らなかった新しい何かを発見できる。
写真……石井雅義
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静岡県藤枝市、緑が生い茂る山間の瀬戸川上流を歩く10人前後の列がある。学生らしい男女は、時には後ろを振り向き、時には手を取り合い、互いを気にかけながら流れに向かって登っていく。夏の強い日差しのなか、緑に囲まれてのリバーリフティングは涼しげでいかにも気持ち良さそうだが、
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そんな彼らの頭上から「気を引き締めていこう」と声が掛かる。声の主は富士常葉大学助教授・山田辰美さん。子どもたちに川と自然と文化を体験させようと5年前から「瀬戸川・里の楽校」を主宰し、
地元の有機栽培農家や瀬戸川流域の自然・文化保全団体と共に地域密着型の環境教育を実践している。 |
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毎年夏には小学生を対象としたキャンプが開かれ、川遊びやリフティング、そば打ちといった食農体験など、自然と触れ合いながら2泊3日の協同生活を送る。今回、山田さんの指導のもとリバーリフティングを行っているのは、子どもたちをまとめるリーダー候補生たちだ。 |
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夏のキャンプを楽しむ子どもたち。 手づくりのいかだでの川下りや川辺での五右衛門風呂、
自炊の食事など、 ふだんなかなか体験できない遊びに子どもたちは夢中になり、 2泊3日があっという間に過ぎていく。 |
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里の楽校では、山田さんの意向でカヌーやラフティングといった道具は使わず、自生している草花や川そのものに直接触れ、自然の素材性を見いだしたり体感することを実践しているため、リーダー自身も実体験しながら自然を楽しむ術を身につけていく。この日の実習でも実際に岩場から川に飛び込み安全性を確認したり、遊べる休憩ポイントなどを学んでいた。「単純に歩くだけなら、あっという間に終わっちゃいますよね。 |
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 川網漁体験。つかまった鮎は手づくりの竹串にさし炭火でじっくりと焼く。頭から尻尾までおいしく食べられる |
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子どもたちにいろいろな発見や遊びをさせるために、彼らには道草をしながら川を登らせているんです。時間の使い方の練習でもあるんですよ」と話す山田さんは、歩きながら道端に生えている葉っぱや枝を取っては何やら指を動かし、バッタや名もなき虫たちを次々つくり出していく。そんな姿を見ていると確かに自然のなかでの遊びには、想像力をかき立て創造性を豊かにする要素がたくさんあることをあらためて認識させられる。リーダーの多くは環境系学部の大学生だが、学生に限らず一定の単位を取れば誰でもリーダーになることができる。実際これまでにも、ほかの会に所属する60歳の男性や子育て中のお母さんたちがリーダー養成講座に参加している。ちなみに修得単位は20単位。この2日間の講義では4単位となる。リーダーにとって大切なことは
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「どこまで子どもたちの心を揺さぶることができるか」だという。 「自然を守りたい。だからその素晴らしさを知ってもらいたいんです。何気ない草花や川に遊具としての宝物性があふれていることに気づいてほしいですね。例えば、水だってビニール袋に入れ川の流れのなかで持てば冷たいだけじゃなく、重さや粘性があることが身を持ってわかります。体ごと自然に触れ、時には危険と向き合うことも必要です。
そこからわくわくしたり、また達成感も得られる」。山田さんは、何も危険を冒せと言っているのではない。リバーリフティングでも流れに足を取られたり深みにはまったりと、気を抜けば危ない場面はいくらでもある。事故にあわず無事に上りきることをここで体験させたいのだ。子どもたちは自然を体験したことで自分を知り、心身共に安定するという。
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結果、そこから余力が生まれ「食べ残しが減った」「発言できるようになった」「一人でいられるようになった」という変化が見られ、
里の楽校が終わるころには、ひとまわり成長した子どもたちに出会うことができる。 そんな活動に多くの人が共感し、夏のキャンプは申し込み日翌日には定員に達してしまうほどの人気ぶりだ。また里の楽校は今年6月からNPO法人となり、地域づくりや環境保全といった流域交流のための活動にとどまらず、今後さらに積極的に活動し、地域密着型の環境教育を広く発信していくという。
里の楽校事務局
〒426-0087 静岡県藤枝市音羽町5-14-10 TEL/FAX.054-643-6124 E-mail:
satonogakko@hotmail.com |
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「良いビオトープをつくるコツは、ビオトープを完成させないこと」とビオトープの先駆者でもある山田さん。生き物を育むひとまとまりの空間を意味するビオトープは本来、完成するようなものではなく、また子どもが主体的にかかわりを持ち続けるためにも、いつでもつくり直せるものがよいという。自然的要素の高いビオトープに人の手を加えるのはどうかと思う人も多いが、小川のように草刈りや泥上げなど、人の手によってつくられた環境には、実はメダカ、ドジョウ、カエル、トンボ……といった |
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多様な生き物が存在できる。ビオトープも最初からあまり手をかけずに済むように整ったものにすると、単一な自然となり、そこに棲む生き物も限られ魅力のないものとなってしまう。生徒たちが、季節ごとの変化を見ながら植物や水系を手入れすることで生き物の多様性をもたらし、また生徒自身も自然と日常的に向き合うことができ、さらには生命に対する認識も生まれてくる。学校ビオトープは、自然と身近に触れ合うことができる学習教材として、注目が高まっている。 |
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