情報誌「ネルシス」 vol.4 2003

P-01 アンコールの遺跡群
P-06 [体験しよう]川で遊び新しい自分を発見する――瀬戸川・里の楽校
P02-05
Photo by Taku Shiobara
地球環境はどんどん悪化している、という論調があるなか、
近年驚くほど改善されている、という主張もある。
いったい地球はどんな状態にあるのだろうか。
今回は 、大人も子どもも楽しみながら地球環境を学べるさまざまな現場を取材した。
そこから見えてきた大切なことは、 自然に分け入り、人間に備わっている五感のセンサーを磨くこと。
それと同時に、進歩を続ける科学技術のセンサーを使って地球を観察し、そして先人たちの知恵を活用することである。
それらを駆使して、私たちが住んでいる地球がどうなっているのかを
しっかり見据えていかなくてはならない。
「地球環境」を知る第一歩として、まずは興味のおもむくままに体験してみてほしい。
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文……竹下宗一(株)ダイヤリサーチマーテック 調査コンサルティング部門 主幹研究員
地球環境やエネルギー
問題とデータとのかかわり

身のまわりの出来事を理解したり状況を判断したりするために必要なデータとのかかわりや、データの魅力、またデータの恐さなどについて、地球環境問題を一例として考えてみよう。ここでデータとは、測定、実験、アンケート、撮影、録音などで取得した結果を数値化、文章化、図示、電子化するなどして

記録し、情報として利用できる状態としたものをいうことにしよう。
 その場で結論を出す必要がない日常の会話では、相手の意見に同意していない場合でも、「そうかね」とか、「そのとおりだよ、君」などと相槌を打つことがある。歩み寄りや合意を目的とする交渉ごとの場合であっても、目的を遂げることができず決裂する場合もある。社会問題は、当事者にとっての最善が

正義であり、真実は一つではない場合も多い。このような問題の解決に必要となるのは、真実の探求ではなく「当事者間の利害関係の調整」や「権利と義務を定めた法律」である。
 しかし、判断や見解が異なる場合でも、その根拠となるデータ(事実、Fact)は、立場にかかわらず共通のものである。 たとえ立場が異なっても、対象を同じ手法で測定するなら同じデータが出るはずである(図1)。
【図3】地球気温の変化(1000-2000年/下、 1861-2000年/上) 【図4】人類活動の指標としての大気中のCO2濃度の変化(1000-2000年/左上)

http://www.ipcc.ch/present/graphics
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出典:IPCC,WMO,UNEP Fig2-3 Global temperature change, 1861-2000 and 1000-2000

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出典:IPCC,WMO,UNEP Fig2-1 Indicators of the human influence on the atmosphere
 
参考1:IPCCはもともと国際連合気候変動枠組条約(UNFCCC、1994年発効)とは関係なく1988年に国連環境計画(UNEP)と世界気象会議(WMO)の下に設立された機関だが、その「気候変動に関する第一次評価報告書」が高く評価されたことから、基本的な参考文献として広く利用されるようになった。その後、条約9条に基づき国連内にも科学的な助言のための補助機関(SBSTA)が設立され、IPCCはその要請を受けて報告書を作成している。気候変動締約国会議(COP)の第3回が97年の京都会議(COP3)である。 参考2:1940年代から60年代にかけて、地球の気温が下がり続けると「現在は間氷期でいずれ地球規模の寒冷化が起こる」という説が発表された。しかし、今からいちばん近い氷河期は約1万年前と13万年前であり、氷河期の周期は少なくとも数万年以上であるようだ。一方、地球温暖化はここ100年における出来事である。温暖化問題で議論の対象とするタイムスケールは数百年から1000年であり、氷河期の周期よりも2桁以上短い。
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本当に地球は温暖化
しているか?
地球温暖化と大気中のCO2濃度の関係は?

しかし、個々の現象が集まってもたらす「状況」や、個々の現象と状況との「因果関係」は、入手可能なデータだけでは一義的に記述できないことが多い。
 例えば、気温や季節は万人が古来日々感じてきたが、地球規模の気候変動が進行していることは、比較的最近まで周知ではなかった。現在では、過去の気温をさまざまな科学的手法で推定することが可能となり、各国の協力によって地表気温観測データをグローバルに集計することができるようになったことにより、地球温暖化現象が明らかになった(図2)。 おおかたの科学者や政府の判断として、地球温暖化現象は二酸化炭素(CO2)など

温暖化ガスの大気中での濃度の増加によってもたらされるとされており、温暖化防止、CO2排出量抑制を目的とした省エネルギー努力や新エネルギー開発が官民で進められている*1。 しかし、一方では地球温暖化防止の取り組みやCO2原因説に異論を唱える人々や政府もある。
 米国ブッシュ政権は国内のエネルギー多消費型産業擁護の立場から、京都議定書からの離脱を決断したが、 この立場を支持する気象学者Richard S. Lindzen(マサチューセッツ工科大学教授)は 「地球の気温上昇に関する破滅的予言の大半は、不十分なコンピュータ・シミュレーションの気候予測モデルに基づいており、時が熟せば間違いであるという結果に終わるかもしれない」と述べている*2
 1930年代に地球の気温が

史上最高値を記録したことなどから、英国王立気象学会は地球温暖化が始まったと宣言した。現在、国際機関「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」によれば、19世紀末以降、全地球の平均地上気温は0.3〜0.6℃上昇したとされている。この点に関してIPCCのホームページに次のようなデータ*3があるので、その一部を紹介する(図3、4) 。
 本稿やIPCCのデータなどをスタート台として、地球温暖化とその原因について、わが国として、今後どう判断し対処すべきか考えてみてほしい。まずは、地球温暖化対策推進本部*4や環境省*5のホームページから調べてみてはいかがだろう。英語が得意であれば、海外のホームページを見ることもお勧めしたい*6。YAHOO、Google、Excite、infoseekなどの検索(Search)から自由にネットサーフィンするのも楽しい*7
*1 気候変動に関する国際連合枠組条約第3回締約国会議において採択された京都議定書
*2 『ニューズウィーク』2001年7月23日号、日本版8月1日号
*3 http://www.ipcc.ch/present/graphics.htm
*4 http://www.kantei.go.jp/jp/singi/ondanka/
*5 http://www.env.go.jp/earth/cop3/
*6 http://www.epa.gov/(アメリカ環境省)  http://www.europa.eu.int/(EU政府)
*7 http://www.yahoo.co.jp(日本語検索)   http://www.yahoo.com/(英語検索)
   http://www.google.co.jp(日本語検索)   http://www.google.com/(英語検索)
   http://www.excite.co.jp/(日本語検索)   http://www.excite.com(英語検索)
   http://www.infoseek.co.jp
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