情報誌「ネルシス」 vol.8 2007

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P-02[特集]都市の空間を活かす 21世紀のランドスケープ・エコロジー

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都市の隙間
新たにオープンしたベルリン中央駅エリア。ここは日本で言えば東京駅周辺だ。
蛇行して流れるシュプレー河畔が夏限定でリゾートに変わる。
デッキチェアが並び、カフェやバー、野外ステージが組まれ、遊覧船が走る。
トラックで何トンもの土砂が運ばれ、子どもたちは砂遊びに興じる。
北国で夏の日差しを愛しむベルリナーには最高の贈り物となる。
日本では、イニシャルプランは上手いが、ランニングまで気が回らないことが多い。
空間が生成変化しないから、すぐに消費され別の場所へみんなの関心が移ってしまう。
常に一過性の遊園地で、そこに住まうという意識は芽生えない。
寂れたら取り壊してまた造ればいいという発想になり、人の気持ちはいつも宙吊りのままだ。
船はテレビ塔の見える旧東地区へ向かってゆく。
寛いだ人々の表情には、かつてここが東西ドイツの狭間であった緊張はない。
百年に及ぶ騒動にさいなまれた後、中央駅は透明なガラスの建築として蘇り東西を結ぶ。
静粛な空気のなかで、次世代の子どもたちにやさしい目を注いでいる。
文・写真…シヲバラ タク