情報誌「ネルシス」 vol.8 2007

P-32 Project File[プロジェクトファイル]
P-46 駒ヶ根展示場KAPリニューアルオープン

P42-45
目次
TOEX環境事業トップ対談 ユニバーサルデザインの先駆者(オピニオンリーダー)を目指して
屋外用の手すりとして画期的な「サポートレールUD」の開発を機に、
TOEXの環境エクステリア事業ではユニバーサルデザインへの取り組みを、
これまで以上に積極的に進めています。
それは「商品中心ではなく、人を中心としたものづくり」の考えからきています。
人にやさしい環境づくりのために、TOEX環境事業がこれから進む方向とは。
開発部と営業部のトップふたりが語ります。
きっかけとなった
サポートレールUD
渡辺:2006年10月に、ユニバーサルデザインの手すり「サポートレールUD」を発売しました。この商品の前身となる「サポートレール」は、1999年に1型を発売して以来の人気シリーズです。当時はバリアフリーがうたわれはじめたころで、歩行用補助手すりを設置すること自体が、人にやさしい環境づくりになっていました。
川崎善幸
1950年生まれ。執行役員
環境エクステリア営業部長
渡辺康晴
1958年生まれ。商品本部
環境開発部 部長


サポートレールは、ほとんどの手すりが地場の鉄工所などで製作されていた時代に、ユニット化したものを現場で組み立てられるようにしたことでヒットし、その後シリーズ化される定番商品となりました。TOEX環境事業にとっても「手すり」のあり方について、関心をもって取り組みはじめるきっかけとなる貴重なものでした。そして、これからの時代にふさわしい新しいサポートレールとして開発されたのがサポートレールUDです。
 開発にあたり、まず「ユニバーサルデザインとはいったい何なのか?」というゼロからのスタートでした。
サポートレール1型(モエレ沼公園)
社内だけでは限界があるため、外部からブレーンを探して専門家による勉強会を開くことから始めました。そしてユニバーサルデザインとは、決まったスタイルとして
構えることではなくデザインを評価する仕組みであり、できあがった商品がすべての人々に使いやすいことが、結果的にユニバーサルデザインにつながっていくのだと学びました。そこで、開発部の若手ふたりが都市部を中心に30カ所以上の手すり現場をリサーチし、また、幅広い年齢層の方々や障害者によるユーザー評価会を実施するなど、「あらゆる人に使いやすい手すり」の開発のために長い時間を費やしました。このことは、今後の商品づくりにも生かすことができるいい経験となりました。

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川崎:サポートレールUDは、「Nelsis ネルシス(Nature・自然+Element・自然力・恵み+Oasis・やすらぎ空間)」という指針を模索していくなかで生まれた商品だと思っています。TOEX環境事業が「人と自然がともに呼吸しあえる総合的な環境づくり」を目指し、ただの商品提供ではなく、人を中心としたものづくりをしていくことで、人にやさしい環境づくりに結びつく。そんな商品を求めて出てきたのがサポートレールUDであり、広い意味でのユニバーサルデザインであったと。
 開発部からサポートレールUDについて報告を受けたとき、その背景から、これは素晴らしい商品になると直感しました。営業部としても、これまでのカタログ掲載にとどまらず、プレス発表をしたり雑誌広告を打つなど、そのよさを積極的にアピールすべく販売戦略や広報活動を行っています。手すりとしては珍しいユニバーサルデザインとあって、発表時には新聞をはじめとするさまざまなメディアに紹介されました。おかげで、営業先にもカタログをお渡しする以前に認知していただき、サポートレールUDをより印象づけることに成功しました。
サポートレールUDが設置された福岡県の新飯塚駅駅前広場
商品は現場から
生まれる
川崎:TOEX環境事業ではカタログに載っている規格品のほか、お客様の要望に合わせた特注品も扱っています。それは人に快適な環境づくりを目指す企業として、現場の状況を踏まえた価値のある商品を提供したいという気持ちからですが、TOEX環境事業にとっても新たな商品開発につながり、そこから生まれた商品は、市場で評価されるという
よい結果をもたらしています。サポートレールも、もとは現場の営業からの要望で商品化されたものです。
 最近は、高齢化や都市のバリアフリー化に関する法整備が進み、ユニバーサルデザインの需要が高まっています。卵形ビームを採用したサポートレールUDは、まさに時代を反映した商品で、おかげさまで高い評価を得ています。しかし、これまで2段ビームタイプひとつのデザインしかなく、価格も他のサポートレールに比べて高めなため、


パラレーロAL型。ユニバーサルデザインを取り入れた引戸
爆発的に売れるということはありませんが、じわじわと売り上げを伸ばしていっている、というのが現状です。そこで、発売から1年がたち、さらなる市場の声に応えるべく、2007年9月に発売したのが1段ビームタイプです。2段ビームタイプより高さを5cm低くし、ユニバーサルデザインの要素を壊さずに低価格化を実現しました。

1段ビームタイプもまた、現場から生まれた商品なのです。これからも、使い手の声に耳を傾けた商品開発をして、広くユニバーサルデザイン商品を定着させていきたいと考えています。
渡辺:サポートレールに限らず、例えば公園の入り口用に、車椅子は入れてバイクの進入は防ぐ車止めなど、いままで、営業部からのリクエストでつくった商品はいくつかあります。開発部では商品をつくるまでで、なかなかその後が見えてこない。営業部から、
お客様の要望や商品の不具合などの情報発信があるからこそ、それを開発や改良に反映させていくことができるのです。これまでもTOEX環境事業では、市場の要望に応え、ユニバーサルデザインに取り組んだ、人にやさしい商品づくりを行ってきました。ただ、そのことを特にうたってはきませんでした。サポートレールUDは、ユニバーサルデザインをわかりやすく打ち出した商品。これを機に、ほかの商品についても、ユニバーサルデザインという特長を
明確にしていきたいですね。
 2007年11月には、サポートレールUDに続き、アルミノンレールキャスター式引戸「パラレーロAL型」が発売されます。専門家を交えて、旧タイプのパラレーロの見直しを実施しました。従来と比べて把手を大型化し、開閉もスムーズに、誰が使っても安心、安全な設計になっています。

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環境エクステリアの
オンリーワン企業に
渡辺:今後、すべての商品をユニバーサルデザイン化していきたいと考えています。TOEX環境事業でユニバーサルデザインのスタンダードをつくり出したい。そのためには、自分たちだけで商品開発できるようにデザイン評価の仕組みを習得し、比較手法や使い手による評価の方法も検討していかなくてはいけません。
 これまでの画一化されたスタイルから脱し、いま、地域の特色を生かしたまちづくりへと変化しています。他社と同じ環境商品をつくっていては、そのうち取り残されてしまうでしょう。これからは、選ばれる時代。いままで評価されてきた側面と、新しいこれからの側面を持ち合わせたTOEX独自の商品づくりをしていく必要があります。
そのためには、営業部と開発部の連携が欠かせません。営業部と開発部で、定期的に話し合いの場を設けていますが、ユニバーサルデザインの勉強会もそのくらいの頻度で行い、連携プレーでよりよい経営体制を整えていく流れをつくりたいですね。
川崎:これまでは、発売時期に合わせて商品開発を進めていましたが、いいものをつくるには、納期を気にせずにものづくりができる環境を整えるべきときなのかもしれません。お互いに納得した商品ができてこそ、積極的に営業もできると思っています。
 売り上げをみると、民間事業のほうが公共事業より高くなってきています。それは、郵政民営化をはじめ、除々に民営化が進んでいるための成り行きでしょう。他社を意識した戦略方法もありますが、これからは世の中の変化をとらえた、
TOEX環境事業ならではの動きをすべきだと思います。そうしたときに「ユニバーサルデザインならTOEX」という存在になりたい。デザイン・コスト・品質に、ユニバーサルデザインをプラスして商品開発および改良を行っていき、そこから生まれた「人にやさしい商品」を、使い手の立場に立って営業する。手すりをはじめ、フェンスやシェルター、引戸などの環境エクステリア商品は、人が絡む商品。そのため、現場に合わせた細やかな対応が求められます。その点については、TOEX環境事業は、お客様の皆様から高く評価していただいています。
 今後は、ユニバーサルデザインに取り組んだいままで以上に優れた商品を開発し、得意の営業力でTOEXならではの商品展開を進め、変化を起こしていきたいと思っています。

NETISでサポートレールUDの新技術を情報公開 あらゆる人に使いやすい、使い手の立場に立って開発された「サポートレールUD」。歩行用補助手すりとしては、画期的なユニバーサルデザイン。ユニークな持ち手の「卵形ビーム」をはじめ7つの特長により、人にやさしい使い心地となっています。これらの特長などサポートレールUDに採用されている新技術を、国土交通省の新技術情報提供システム「NETIS」で情報公開しています。
サポートレールUDの7つの特長(特許出願中)
1 卵形ビーム
支え歩きのときには、手首をひねることなく手のひらにフィットして握ることができる。伝い歩きのときには、手のひらを添えて滑らせやすく、また指を掛けやすい。
2 端部のUエンド
かばんや袖口がひっかかりにくく、小さな子どもがぶつかっても安全性が高い。
3 エンドグリップ
端部での滑りを防止するとともに、目の不自由な方への「手すりの終わり」を伝えるサインとなる。
4 樹脂カバー
樹脂カバーでビームを被覆しているため、夏の熱さや冬の冷たさを感じにくい。

5 ブラケット
ボルトの露出がなく、ビームとの連結部がスロープ状になっており、伝い歩きのときの、指の当たりを考慮。
6 フロントビーム
上段と下段のビームの張り出し幅がずれているため、どちらのビームも握りやすい。
7 フリージョイント
目の不自由な方へ、通路の変化を事前に伝えるとともに、直角コーナーなどで指が正面へ衝突するのを防止する。
*NETIS(New Technology Information System)とは、国土交通省が運用している、民間事業者などにより開発された新技術にかかわる情報を、共有および提供するためのデータベース。これらの新技術を情報公開し、公共事業などに積極的に活用していこうという試みです。NETISは平成10年に登録を開始し、現在の累計登録件数は4600件を超えていますが、品質向上および各技術情報の提供期間を設けているため、掲載されている技術数は約3300件となっています。新技術を活用した直轄工事件数は増加傾向にあり、発注工事総数に占める割合は、2006年度で20%以上に達しています。
NETIS:URL http://www.kangi.ktr.mlit.go.jp/
EvalNetis/NewIndex.asp

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