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情報誌「ネルシス」 vol.9 2008
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あらゆる人に使いやすい、使い手の立場に立って開発された「サポートレールUD」。
屋外用手すりとして徹底的にユニバーサルデザインに取り組み、高い評価を得ました。
そして2008年、より機能を充実させたサポートレールUD〈カラーUDタイプ〉が誕生。
識別しやすいカラーを2色採用したことで安全性がぐっと向上しています。
2006年に発売された「サポートレールUD」は、開発段階からさまざまな検証を行ってきました。ユーザー評価会もそのひとつ。さまざまな方に実際に商品を体験してもらい、その使い心地を評価してもらいました。
「参加者のひとりに弱視の方がいらして『手すりがあることで、そこが階段だと認識できる』と話してくださいました。その一言で、手すりには歩行の
補助だけでなく視覚的な役割もあるのだと気づかされたのです」と語るのはTOEX商品企画グループの西川圭一。
はたしてサポートレールUDは誰にでも見えやすい手すりなのか? 手すりにより効果的な識別機能をもたせるためには、どうすればいいのか? そもそも人によって見え方にどんな違いがあるのか? これらの疑問に正面から取り組みました。ユニバーサルデザインの多くは使いやすいデザインに主軸を置いており、色に関しては
情報量が圧倒的に少ないのが現状です。サポートレールUD〈カラーUDタイプ〉の開発は、まず色覚について調べることから始まったのです。
世の中は色であふれています。でも今、自分が目にしている光景は誰が見ても同じ色なのでしょうか。人が見ている色彩は客観的に知ることができません。多分、その人も同じように
見えているのだろうと思い込み、光景を共有しています。
脊椎動物は目の網膜にある錐体という視細胞をセンサーとして色を感じています。ヒトと一部のサルは3種類、ほ乳類のほとんどは2種類の錐体をもっています。また、鳥類やは虫類は4種類の錐体をもつと言われていて、錐体の数が多いから優れているというわけではなく、進化の過程で多様な色覚を獲得したと考えられます。
人がもっている3種類の錐体は、
光の三原色と呼ばれるL(赤)、M(緑)、S(青)。その3色の合成で色覚が起こりますが、遺伝子のタイプでいずれかの錐体がない、機能しない、あるいは多くの人と特性が少し異なる錐体をもっていることがあり、色の見え方や感じ方は非常に多くのパターンが存在します。NPO法人カラーユニバーサルデザイン機構(CUDO)では、これらを称して「色弱」としています。
「色弱は、異常でも障碍でもありません。“正常な色覚”があり病気になって
判別できる色が減ってしまったわけでもありません。ヒトが進化の過程で緑の葉のなかから赤い実を早く見つけるため、またはお互いの顔色を見分けるために獲得した能力だとか諸説がありますが、長い歴史のなかでヒトは多様な色覚を得ていったのです。人の肌の色が多くのタイプに進化したように、色覚についても同様に、多くの色覚タイプがあるということなのです」と話すのはCUDO副理事長の伊賀公一氏。
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色覚は、3種類の錐体がそろっているC型、L錐体がないP型強度、M錐体がないD型強度などいくつかのタイプに分かれ、血液型のように先天的なものなのでタイプが変わることはありません。日本人の男性では約95%がC型、約5%がP型やD型などで、男性では約20人に1人、女性では約500人に1人の割合で色弱者がいます。これほどの割合で色弱者がいるのに、カラーユニバーサルデザインはなぜそれほど浸透してこなかったのでしょう。その理由のひとつとして、色の見え方の違いを説明する難しさがありました。
「一般的に多いC型の色覚では赤、橙、黄、黄緑、緑の帯域の色の識別を
得意としますが、色弱者はこの帯域の色識別が不得意です。逆にC型(一般色覚)者には苦手な菫、青、青緑、緑の領域や明暗の違い、赤と呼ばれる帯域の詳しい識別は色弱者のほうが得意だったりします。赤と緑が見えないとか、色弱者には色がまったく見えないといった誤解があり、理論が理解されなかったことが長年の問題でした。言葉だけでは難しいため、CUDOではコンピュータによるシミュレーションを使って、画像や映像の資料を作成しています。ユニバーサルデザインにもさまざまな分野がありますが、色覚については正常も異常もなくボーダーレスで、線引きができません。
それゆえに本当のユニバーサルデザインが求められているともいえるのです。CUDOでは、タイプ別の色弱者によるモニタリング調査や検証などを行い、カラーユニバーサルデザイン技術を構築しています」と伊賀氏。
2004年の設立以来、徐々にカラーユニバーサルデザインに対する重要性の理解が高まり、2007年にはメーカーから約100件の相談を受けるようになりました。TOEXでも、専門機関であるCUDOに検証を依頼。2008年3月に、サポートレールUD〈カラーUDタイプ〉はカラーユニバーサルデザインを満たしていると認められ、認証マークを取得しています。
カラーユニバーサルデザインは、すべてのものに必要でしょうか?住宅など個人で設定を変更できるものもあり、環境に応じて対応を検討したほうがいいようです。
「何よりも欠かせないのは、やはり公共の場において。数年前まで、地下鉄の案内サイン類はカラーユニバーサルデザインに配慮されていなかったので、急いでいるときには地下鉄を乗り間違える、トイレで男女の入り口を間違える、ということがありました。トイレの場合、サインの男女の色区別が水色とピンク、背景にグレーが使われて全体が淡い色合い
だったりすると判別しにくいですね。
今では東京メトロのトイレサインは色弱者にも見分けやすい色の組み合わせになり、男女の形もよりわかりやすいデザインに改善されています。色弱者の視点に立った色づかいをしていけば、誰にでもわかりやすい表示にすることは可能です。例えば、東京メトロのホームの案内図や路線図。一部、カラーユニバーサルデザインに配慮して改善したことで、高齢者、子ども、外国人にいたるまで、みんなにわかりやすくなり乗り継ぎもしやすくなったと評価されています」と伊賀氏は話しています。
より多くの人が判別しやすくするにはどうすればいいか。
それには明度差、コントラストをつけることがひとつ挙げられます。しかし、実際にはそう簡単なことでなく、昼と夜、日陰と日向、照明の有無、夏と冬、背景にあるものなど、環境が変われば条件も変わってきます。カラーユニバーサルデザインに限らず万能なものはなく、その場に合った設置条件から適切な色を選ぶことが大切になってきます。
色弱者が識別しやすい色、設置条件を想定して、サポートレールUD〈カラーUDタイプ〉にはブルー系とイエロー系を採用することに決定。そして、識別しやすいだけでなく設置する景観も考慮し、単なるブルーとイエローではなく、さらに適切な色を追究していきました。
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TOEXでは、カラー戦略として人間が生存する地球の自然界の美しい色を体系づけた「ヒューマンカラー理論」を採用しています。この理論を提唱されている株式会社フィットモア色彩研究所代表取締役社長の古賀けい子氏は「ヒューマンカラー理論とは、人間がもつ、雲行きを察知するなど危機管理能力の延長としての能力、美しいと感じる本能の基準であり、自然界の美しいバランスを
生かした色彩調和理論。住宅は個人の範囲ですが、公共空間は絶対多数の方がかかわってきます。前提条件を考え、また遠くから見て配色を決めることが大切です」と話しています。
サポートレールUD〈カラーUDタイプ〉には、カラーユニバーサルデザインに配慮し景観にもなじむ色として、ヒューマンカラーからブルー系のアースネイビーとイエロー系のライムライトイエローを取り入れることにしました。
「アースネイビーは地球の自然を象徴する紺で、大気と水は
生命を支えていることから、欧米では生命の色として平和なイメージがあります。ライムライトイエローは朝のやわらかい光で、安らぎの色ですね。黄と白と青からなる色で、朝に降りそそぐ光は青みがかっているんです。きつい色でなくても、明度差を意識することで識別しやすい組み合わせになり、また心地よく目にやさしい空間がつくれます」と古賀氏。
2008年4月に開催された西日本最大の
福祉展示会「バリアフリー2008」では、アースネイビーとライムライトイエローの2色についてアンケート調査を実施。会場を訪れた多くの方から、認識しやすく好感がもてる色との評価を得ました。
アースネイビーはコンクリートの壁など高明度の背景に、ライムライトイエローはレンガや植裁など低明度の背景に合わせることで、サポートレールUD〈カラーUDタイプ〉のカラーユニバーサルデザインとしての
機能が発揮されます。
まず手すりを識別してもらうことで場所の変化を伝え、手すりのつかまりやすさで歩行者をやさしく支援する。こうした機能をもつサポートレールUD〈カラーUDタイプ〉を設置することで、空間に安全と安心という価値が生まれます。
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トレンド発信地、青山の一角に設置されたサポートレールUD。急な階段も行き来しやすく
幅員の広い階段では、両側から使えるセンター柱タイプを推奨します
都心の裏道にも、さりげないやさしさを
緩やかに続くスロープに安心感を与えます
駅のバリアフリー化工事で設置されたシェルターと手すり
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