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■バリアフリー 今日、工業国、農業国の違いを越えて、このように追究されつつあるのがリサイクルを考慮したデザイン、あるいは「ゼロ・エミッション」のデザインであり、環境ボランティアたちは国境を越えて活躍していますが、この地上には、国境よりも越えにくい、小さなボーダーやバリアが無数に存在しています。具体的な例をあげれば、小さなこどもやお年寄り、あるいは障害をもつ人などには越えられない階段の大きな段差等であり、例えば、それを考慮した家を「バリアフリー
barrier free」住宅と呼んだりします。 しかし、その言葉が意味するのは、いうまでもなく段差をなくすことだけではありません。「バリアフリー」は、弱い立場にある人々が、社会のなかで生活を営む上で妨げとなる身体的・精神的な |
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障壁を取り除こうという理念を表す言葉です。この「バリアフリー」は、障害をもつ人でも、ひとりの市民として普通に暮らせる社会づくりをめざそうという、「ノーマライゼーション
normalization」の理念に基づいています。 ■ノーマライゼーション 「ノーマライゼーション」は障害をもつ人が特別視されることのない社会や生活環境をつくる運動であり、いわば、障害者を考慮にいれずに成立している社会こそが異常であり、
障害というものはむしろ社会環境がつくっているのだ、という理解に基づいています。 「ノーマライゼーション」は1960年代に北欧で始められた運動でした。アメリカや日本などの先進工業国が、公害など、物理的環境の異常に気付き始めたころ、 |
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デンマークやスウェーデンのような北欧の社会福祉、社会保証制度の先進国では、社会的環境の異常が問題になっていたのです。1960年代は、二重の意味で、環境の発見の時代でありました。
経済大国で先進工業国のひとつである日本は、「ノーマライゼーション」後進国です。「高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築促進に関する法律」である通称「ハートビル法」が施行されたのは1994年になってからのことです。この法律によって、不特定多数の人々が利用する病院、劇場、集会場、百貨店、ホテルなどの公共性の高い建築物を、ハンディキャップをもった人々が円滑に利用できるようにするための建築的基準が、ようやく定められたのでした。 |
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