情報誌「ネルシス」 vol.1 2000

P-13 [SPECIAL REPORT]環境デザインの現在 藤田治彦(2)
P-27 [PROJECT FILE]都市空間に水と風と緑を ヒルズ久が原/地域の顔 ―駅― 粉河駅南広場/川はすべての人にやさしい 荒川 岩淵地区
P23-26
「環境」の大切さ

私たちは自然と人間が深く呼吸しあえる本来の心地よさ、安らぎを大切に考えます。たとえば公園―そこに集う人々は本当に安らぎの時を過ごせているのだろうか、本来の安らぎの空間を私たちは創り出しているのだろうかと。一般的にエクステリアマーケットでは「景観」という言葉を耳にします。しかし私たちは、あえて「環境」エクステリアと呼んでいます。その理由は、「景観」は造られたモノで構成された風景的空間という印象を感じるのに対して、「環境」は生まれ出たモノによって構成していく人間的空間、と考えるからです。自然の原理・法則の中で生活をするという本当の心地よさ、快適さが見失われつつある今、私たちは「自然」の素晴らしさ、「環境」の
大切さを深く認識し、空間創造と製品開発に取り組む姿勢を持ち続けてきました。本来、「環境」は絶えず循環していくものです。その循環の乱れによる環境問題が顕著になり始めたここ数年、「環境」や「自然」の大切さに立ち戻り、地球的規模でエコロジー活動が行われるようになりました。私たちも、これまで以上の循環型企業をめざしたシステムづくりを推進していきます。
ごみ焼却灰の無害化・再資源化を実現したリサイクル材「結晶質スラグ骨材」を採用するなど、環境の保護と資源の再利用を推進しています。
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「ユニバーサルデザイン」の
推進


環境問題とともに大いに意識が高まっていること、それは「医療福祉」に関する問題です。我が国での福祉対策は、国際的に著しく立ち後れてきました。21世紀には日本人の4人に1人が65歳以上になると言われている今、迅速な対応が必要であるということは、すでに言うまでもありません。しかし、単純に「高齢者用」「障害者用」だからといって、マニュアルの基準数値ばかりを追い求めた無責任な製品開発や空間設計は、よけいに不便な空間を造りだすばかりではなく、利用者に混乱や危険を招くおそれがあります。また、「高齢者」「障害者」という言葉自体も、漠然とした安易な総称に過ぎません。この社会を構成し、未来にむかってともに生きていく私たちの使命は、今こそ本来の人間的視点に立ち戻った製品開発と空間づくりにほかなりません。それはつまり、障壁を取り除くというバリアフリーではなく、すべての人のためのユニバーサルデザインの推進です。機能性の追求だけではなく人間性の追求、人として本当に快適な生活をおくるための空間づくり。
それが私たちの、次世紀に向けたすべての創造の原点です。
「環境」で遊び、「環境」に学ぶ

遊びの空間、特に公園で楽しむモノと言えば、遊具を思いつきます。昔ながらのブランコから最近はモジュール式の大型複合遊具施設まで、多種多様なものが公園にあります。私たちは現在、このような一般的な遊具は商品アイテムとして持っていません。なぜならばそれは、すでに遊び方が決められているもの、ただそれで遊ぶだけのものでは、「環境」をテーマとしている私たちの考える遊具とは言えないからです。本来の遊びや楽しむための遊具とは何だろうか。それは決して一方的に与えるものではなく、「環境」の中で楽しみ、何かを学び、心身ともに豊かになることをサポートするものでなくてはならない、と考えています。たとえば「遊ぶ」という行為の中で、自然界の法則を学ぶことができるもの、心やからだがリフレッシュされるもの、また歴史や文化を伝承していくものなどを創り出すことです。単なるハードとしての遊具ではなく「環境」に一歩踏み込みこんだ「環境遊具」は、感性豊かな子どもたちのみならず、あらゆる人々の心身を癒し、学び、憩う、本来の人間的空間を創り出す要素のひとつとして、今後の製品開発の必要性を感じています。
「空間価値提案型」の製品開発

これからの「空間」の意味は、「目的提供型」から「価値創造型」へと変化していくのではないでしょか。たとえば公園、河川敷、森林などに設置されるサイクリングコースを例に見てみると、これまでは健康的で快適なサイクリングのために、自然を利用した眺望のすばらしいコースを備えることが目的でした。しかし、その空間に複合的な意味を持たせたとき、人々にとって豊かな価値を自ら創造していく空間となり得ます。それは、街を結び人や情報が交流する地域連絡道であったり、ジョキングやウォーキングも楽しめるといったコミュニティーロードなど、地域に根ざした価値ある空間として成長していきます。そして、空間が新しい意味を持つとき、そこに適した新しいエクステリアが必要となります。私たちは、設計された空間において必然的に必要となる製品を優れた品質で開発していくだけではなく、空間の新しい使い方や価値を提案していく「空間価値提案型」の製品開発をおこなっています。新製品「自然浴さんぽ路」は、人の治癒力を高めるという福祉的な効果を併せ持った、公園などの「空間価値提案型」として開発した製品のひとつです。
〈ユニットレール1型〉を応用したバイク進入防止ゲート
自然と触れ合う境を大切に考えたフェンス〈楽樹〉
自然の空気をいっぱいに吸いこみながら、治癒力を高める〈自然浴さんぽ路〉
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「自然浴環境デザイン
−Nelsis−」の創造


本来、人間は生活の中に「自然」を求めます。しかし自然の中ですべてを生活するということは、今日では現実的に不可能となりました。そこで私たちは、日常の暮らしに自然界の恵みをとり入れた健康で心豊かな環境づくり“自然浴生活のすすめ”を企業理念として、1996年を「自然浴による価値創造元年」と名づけました。以来、住宅エクステリア事業、環境エクステリア事業のそれぞれのマーケット
において“健康とくつろぎ”空間を創造する生活産業型企業の構築をめざし、製品開発、啓蒙活動、情報発信をおこなってきました。
そして、やがて訪れる21世紀。いま私たち環境エクステリア事業は、さらなる空間価値創造型企業をめざし新世紀へ向けた新たなる理念「自然浴環境デザイン Nelsis ―ネルシス―」を提言します。「自然の力、恵み<Nature、Element>を取り入れた、やすらぎの空間<Oasis>」を語源とした「Nelsis―ネルシス―」。それは、さまざまな人が共に生きていく公共空間
において、心とからだを休める「憩い」、心とからだを刺激する「癒し」、心とからだで体験する「学び」という自然浴環境を形成し、あらゆる人が自然と呼吸しあえる場面を創造していくことです。公共空間における“あたりまえの安全性と快適性”が保たれてこそ実現する空間「Nelsis―ネルシス―」は、新世紀に向けての幅広い製品開発と総合的な自然浴環境づくりを総称した、私たちの環境エクステリア事業における指針です。
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