情報誌「ネルシス」 vol.10 2009

P-26 ネルシス10周年記念インタビュー
P-30 Project File[プロジェクトファイル]

P28-29
目次
ネルシス10周年記念対談
時代を見据え、魅力ある環境エクステリアメーカーに 長廻 悟(取締役 兼 常務執行役員 営業本部長 兼 環境エクステリア統轄部長)×小林秀樹(取締役 兼 常務執行役員 商品本部長)
(左/長廻 右/小林)
TOEXでは、公共事業を扱う環境エクステリア部門ができた30年前から「景観」ではなく「環境」という言葉を選んで使ってきました。これは、風景のひとつとしてただ商品をつくるのではなく、周辺の自然や人々とのかかわりといったことも考えて商品づくりを目指そうという意識からきたものです。
2000年には「Nelsis ネルシス(Nature・自然+Element・自然力・恵み+Oasis・やすらぎ空間)」という指針をかかげて、未来に向けた商品開発に取り組んできました。21世紀を迎えてからこれまでに、わたしたちを取り巻く環境は大きく変化し、「Nelsis ネルシス」という方向性がますます時代と重なり合ってきています。今後、さらなる飛躍のためにTOEXが目指すべき姿とは。
環境エクステリア統轄部長と商品本部長の二人が語ります。

環境エクステリア統轄部の
チャレンジ
長廻:近年、公共事業はどんどん規模が小さくなってきています。日本は一時期のように施設を次々とつくっていくような政策から、次のステップに移ってきている。オバマ大統領が「グリーン・ニューディール」政策を打ち出しましたが、日本でも都市環境のインフラを再び見つめ直す時期にきているのではないでしょうか。従来のインフラを再設計する際に役立つメーカー、採用されていくメーカーにならなくてはいけません。
 これまでTOEXでは、最終的な施主である役所に対して積極的に営業をしてきました。また施主の設計をお手伝いする設計事務所に対しても、専門チームをもって
一生懸命に声を聞いてきました。TOEXの商品はこれです、と提供するだけでなく、ニーズをどうやって吸い上げて、解決し具体化していくのか、それが大事です。一緒に都市設計を提案させていただけるパートナーのような存在になれるよう、さらなる営業の強化を目指して、2008年から「市場開発部」をスタートさせました。ベテランメンバーからなる特殊物件専門の営業部隊をもつ市場開発部で、あらゆる物件の提案型営業をしています。
 都市はデザインに限らず、さまざまな面で常に進化しています。その進化に遅れをとらない、それどころかTOEXから公共空間に新しい価値を提案するような、そんなメーカーを目指していかなくてはいけません。
小林:環境エクステリア部門ができて約30年になります。TOEXには「住宅エクステリア」「自然浴エクステリア」「環境エクステリア」の3つの部門があり、これまではそれぞれ別のユーザーさまに営業してきました。
 しかし、考えてみると個人住宅と公共空間は道路を介してつながっていて、まちづくり、道づくり、家並みづくりは一緒のはずです。これまでは、それぞれの空間ごとに商品開発が行われてきましたが、連続性があってこそ、初めて美しいまちづくりができるのではないか。エクステリア業界全体が、ようやくそういった動きになってきたのだと感じています。これからのTOEXは同じ品質、同じコンセプトで、住宅や環境の垣根を越えて取り組んでいく方針です。

Top > P28 > P29
P29
 TOEX商品では以前からカラーを重要視してきました。主力部材であるアルミは、さまざまな表現ができる素材のひとつですが、カラーと融合させることでさらに魅力ある商品が生まれます。おかげさまで、TOEXが展開しているアースカラーは自然なエクステリアを演出できると好評です。公共の市場においては、強度を重視しているせいもあってか土木的なイメージの商品デザインから抜けきれていませんでした。住宅エクステリア商品では、すでにデザイン重視で商品開発が進んでいて、ボルトやビスといった部品類は見えない、隠すようになってきています。住宅エクステリア部門をもつ強みを生かし、環境エクステリアでも新しい色の展開や洗練されたデザイン性をプラスして、
業界で一歩リードした商品の展開を進めていきます。
環境への負荷を軽減する
エコ商品への取り組み
長廻:これからの時代を見据えると「エコ」は、はずせません。エクステリアの視点から見ると、いろいろな意味で屋根は重要な位置を占めています。ソーラーパネルで都市にかかる屋根を機能化する。自然エネルギー商品は、そこでつくり出した電力をどう使うかというシステムづくりにまでかかわってくる話です。自動車など、いろいろなものがどんどん電気化されてきていますので、ソーラーパネル需要に対して、相当な勢いで都市のインフラが整ってくるでしょう。
エコから生まれてくる新しい需要に応えるため、エクステリアだからこそ実現できる商品提案を行いたいと思います。
小林:実はTOEXでは十数年前に、ソーラーパネルや汚水利用、屋上緑化などの研究開発を行っていました。なんとか商品にならないかと試行錯誤しましたが、時期尚早でうまく進まなかった。そして今、やっとそういう時代になってきた。十数年前は、時代を先読みしすぎて商品開発にまで至りませんでしたが、そのときのスタッフはベテラン社員として活躍しています。会社の財産として培ってきた研究成果があるので、今後早い時期に商品を具体化していこうと考えています。緑化や汚水利用、ミストなどの

エコ的な要素を取り入れていくつもりですが、それを前面に出すのではなく、TOEXの商品はエコであって当たり前にしたい。エコ機能を定番商品にうまく融合させていきたいですね。
建築的要素を取り入れた
新商品登場
長廻:2009年10月に、高いデザイン性を備えた「アーキライン」シリーズを新発売しました。公共空間では、大きな敷地を囲うフェンスが主力商品のひとつですが、新しい需要を生み出そうと開発したのが、敷地内で使っていただくスクリーンフェンスです。例えば
新登場の「アーキラインスクリーンフェンス」。人が集う集合住宅などのロビー部分や、エアコンの室外機のあるバックヤードを美しく覆います
建築の正面の一部分や室外機まわりなどに目隠し的な使われ方を想定しています。スクリーンフェンスの柱は、連続性を途切れさせないように格子部分と一体化して見た目を美しく、デザイン性を高めています。今までの土木的イメージから脱却し、建築側に歩み寄ったかたちで新しい需要を掘り起こしていこうと開発された先駆け商品です。これまで以上に建築的なエリアに入り込んでいき、設計者サイドの要求に応えられるような商品開発に取り組みました。もちろん、引戸やシェルターといった主力商品でもデザイン性の高いアーキラインシリーズを展開していきます。

TOEXがつくる美しい環境
小林:個人的なことですが、最近、歴史的な場所巡りをしています。TOEXの事業ルーツは門扉ということもあってか、皇居などの門を見て歩くことが楽しいですね。平泉の毛越寺にも足を運びましたが、今は門がなく庭園が広がっています。毛越寺と、阿修羅像が収蔵されている興福寺の復元図を見てみましたが、いずれも門と回廊が巡らされ、現在の姿とはぜんぜんスケール感が違い風格があります。公共空間にとって、いかに門とフェンスが大切かをあらためて実感しました。
 数百年前にできた昔の門を見て歩いて思ったのですが、古い門と新しいものとを
屋根のアーチに沿ってLED照明を組み込んだシェルター「クレフヤードFX15A型」。無駄のないスッキリとしたデザインに仕上がっています
コラボレーションするのもおもしろいのではないか。新旧をうまく融合させる、そんな空間づくりもこれから求められてくるでしょう。エクステリアのリーディングカンパニーとして、これまでにない取り組みにチャレンジしていきたいと思っています。
長廻:最近訪れた北京のメインストリートには驚きました。オリンピックを中心に都市整備されたためか、整然として設計が一本通っているような、都市として近代的な美しさを感じました。日本も都市環境全体の美しさが出てくると、ヨーロッパに引けを取らない魅力あるアジアの都市になるのではないでしょうか。いずれにしても、まちの風致で重要なのは外側の風景を建築とマッチさせることだと思います。TOEXの商品はまちのなかに出て目立つようなものではなく、しっくりなじむ、まちに溶け込むようなデザインで、より快適な環境づくりをお手伝いできるメーカーになりたいですね。

Top > P28 > P29