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フロリダのシーサイドやセレブレイションに比べると、アップダウンする丘に沿って並ぶ重厚なレンガ造りの住宅、田園風景のイギリス的雰囲気はアメリカ北部ならではの特徴である。ケントランドではバージニア州のアレクサンドリア、ニュージャージー州のプリンストンがモデルにされた。
開発の波が押し寄せるなか、長い間売りに出されず残っていた352エーカーの元農場の歴史は18世紀まで遡ることができる。その敷地は1988年に様々な他分野の専門家が協力して多元的なプロジェクトの要件に取り組むDPZによるグループ会議によって6つのグループの住宅区画に分けられ、総計1,800戸、約5,000人の住む町として計画された。住宅の他にオフィス、市民文化活動の場、店舗の区画も含み、住民の多様性を重視するため、リタイアメント住宅、家族用一戸建て住宅、タウンハウス、1階が店舗の賃貸アパートメント等、さまざまなサイズと価格の住宅を提供している。 |
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それらの異なるタイプの住宅がお互いに近接して配置されることにより、さまざまな人々が知り合い、社交的な接触が促進される。その地域の自治体に任せられる管理は任せるなど、管理費や所得税は最低限に抑えられる工夫もしている。
ケントランドの広告はこの町の特徴を簡潔に述べている。「昔のまちづくりが流行している。袋小路はなくなり、ストリートは格子状に交差する。駐車場ではなく歩道が優先。都市スプロールでなく小さな町の魅力。狭い道路が自動車の速度を落とし、家々は街路に面して密接して建ち、友情を促進する。歩道は学校へ、公園へ、商店街へ続く。歴史的な大邸宅はコミュニティのために保存される。11エーカーの湖は緑に囲まれている。レクリエーションセンターも駅も家からすぐそこである。保育園は小学校の隣にある。このメリーランド州モンゴメリー郡の社交的で文化的な中心である。」と。
公共空間と市民施設が |
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豊富で、湖、湿地帯、緑道、広場などがうまく敷地を区切りながらも全体をリンクさせている。学校や保育園、教会などの重要な公共施設は円を囲んで同じ場所に計画され、コミュニティ内のどこからも道路が中心に向かい、アクセスしやすい動線となっている。既存のカシなどの樹木はなるべく残され、昔から敷地にあった歴史的な建物は文化的センターとして利用されている。
商業エリアには住民が歩いて行けるよう計画されると同時に、将来の成長に対応する大きめの駐車場も準備された。賑やかな商業エリアと静かな住宅街の間の空間は広場とストリートの気持ちの良い公共空間でつないでいて、これが通常の郊外開発とケントランドを異にする。商業エリアを経済的に成功させることは住宅開発のひとつの課題でもあり、ケントランドでは景気が落ち込んだときにこの商業エリアの再構築がなされ、オーナーシップの変更などにより危機を切り抜けた。 |
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