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自然に関する研究は時間がかかります。以前、私たちの研究室にアメリカからジュリーさんという藻類の研究者が来ていました。ジュリーは、口癖のように河川の研究は7年が1サイクルだから2サイクルやるとしたら14年かかる、だから河川でドクターを取るのは難しいのだと言っていました。彼女は、水源が泉で変動の少ない川を対象にドクターを取得していました。自然の河川では洪水の多い年、雨が少なく流量の少ない年などがあります。したがって一通りのことがわかるのに相当の年月がかかります。自然共生研究センターは流量などがコントロールできるので、自然の川よりずいぶんと研究はやりやすい環境にあります。しかし気候の変動や生物の年ごとの変動までは制御できません。ですから自然共生研究センターの |
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研究はまだ始まったばかりで、本当の研究成果が出るのはこれからです。しかし、2年間の研究でいくつかのことがわかってきました。
まず私たちが最初に心配したこと、疑問に思ったことは、本当の川とつながっている下流から、人工的につくった河川に生物は棲み着いてくれるのだろうか? 棲み着くのにはどれぐらいの時間がかかるのだろうか?
ということでした。色々な生物の専門家に聞いてもはっきりとした答えは得られませんでした。魚などが棲んでくれるのか、本当に心配しました。今では共生センターではあたりまえのことになりましたが、実験河川に水を流し始めるとすぐに魚が入ってきます。本当にその日から魚が入ってきます。今年は冬の間、実験河川の改良のために水を止めていましたが、 |
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5月になって水を流したとたん、大きなナマズが何匹も入ってきて、オスメスの番になって泳いでいました。水を流してから魚の量は日を追って増えていきます。8月から9月ぐらいがもっとも生息量が多く、おそらく800mの実験河川に1万尾程度の魚がいると推定されます。これは私たちにとって驚きであると同時に喜びでした。この結果は、自然環境のことをよく考えて河川改修をすれば、生き物は帰ってくることを示しています。
また生物の種類によっても川の中に入ってくるスピードが異なることがわります。たとえば魚は早く、水生昆虫はそれより遅い。行動範囲や移動速度、生活形態によって定着のスピードは異なっていることがよくわかります。 |
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