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環境に対する人々の関心が高まるなか、さまざまな分野で地球環境に注目した商品やプロジェクトが開発されている。旅行業界もその例外ではなく、従来のレジャー的要素の強いマスツアーとは内容が異なり、これまであまり見られなかった、自然環境を体験することに重点を置いたエコツアーが増えてきている。
エコツアー自体は旅行という行為だが、その背景には「自然を生かし、また継続していくためにそこに暮らす人々が観光環境を整え、その結果、地域経済を活性化させる」という概念があり、それが「エコツーリズム」と呼ばれるものである。
エコツーリズムのそもそもの始まりは、1980年に国際自然保護連合(IUCN)、世界自然保護基金(WWF)、国連環境会議(UNEP)が中心となって発表した「世界環境保全戦略」のなかで、継続的開発の理念を提唱したことからだといわれている。日本国内では89年に発足した「小笠原ホエール・ウォッチング協会」を皮切りに、90年には当時の環境庁が国内エコツーリズム推進方策検討調査を |
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開始し、徐々にエコツーリズムが盛んになっていく。さらに、96年には西表島で民間初のエコツーリズム協会が、98年には旅行業界や学識経験者、国・地方自治体などによって「日本エコツーリズム推進協議会」が発足した。日本エコツーリズム推進協議会はその後、「日本エコツーリズム協会」と改名し、今年2月にはNPO法人となり、エコツーリズムを全国レベルで浸透させるべく積極的に活動している。
そもそもエコツーリズムとは何を指していうのだろうか。日本エコツーリズム協会の小宮充博さんに聞いてみた。「エコツーリズムの定義については、国々や地域、また提唱者によっても多少のばらつきがあります。概して“自然をベースとし、教育的要素があり、持続可能となるような環境への配慮がなされていること”にポイントを置き、さらに日本では旅行業界の動きが加わって展開されています。エコツーリズムが、単なる自然を観賞するための観光旅行と大きく異なる点は、自然環境保護の一翼を担うことと、直接的にしろ間接的にしろ、その地域に |
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経済効果があるかどうか、ということです」 この定義を踏まえ、国内のエコツーリズムは大きく2つのスタイルに分けられるようである。一つは小笠原や石垣島、屋久島など最初から自然資源が豊富にある場合の「自然破壊回避型」。もう一つは、川や山、自然公園など部分的にある自然や地域文化を目玉にした「まちおこし型」だ。今のところエコツーリズムについては統一した規制はなくそれぞれの地域の任意で行われており、その内容や質はまちまちだ。そこで、日本エコツーリズム協会ではセミナーや講演会などを開き、その土地に参考になる情報提供を行っている。「環境教育系や旅行業など各専門分野の会員がいますので、地域に合わせてセミナーを行っています。最終的には、実践していく地元の人たちが主体となるように促していきます。最近、特にエコツーリズムに力を入れている地域が多く、各地で自主的に自然学校を開き、一定の水準を保つための人材育成プログラムに取り組んでいるところもあります」と小宮さん。
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