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その場所のためだけのアート |
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私は、アートプロジェクトを手がけるとき、基本的にはヴェネツィアビエンナーレなど美術の国際展で評価された作家のところにまず行きます。そういった美術の世界で非常に高い成果を挙げている人のなかには実験的なことをしている人たちが多いこともあり、リスクも高いのですが、その人たちに場所の情報を与え、何をつくるかを聞き、形にしていくようにれる、しています。プロップアートと呼ば
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PROFILE |
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森美術館副館長。1949年東京生まれ。慶應義塾大学経済学部、文学部哲学科(美学美術史学専攻)卒業。国際交流基金等を経て2002年より現職。これまでヴェニスビエンナーレをはじめ、多くの国際展、国内外の展覧会企画者、パブリックアート計画のコンサルタント等として活動。AI CA(国際美術評論家連盟)副会長、CIMAM(国際美術館会議)評議員。慶應義塾大学講師。 |
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れる、買ってきたものをぽんと置くということではなく、この場所にいちばんいいものは何かという発想で議論していき、その結果、その場所のためのアートをつくり演出することになります。
その方法で初めて手がけたのが「横浜金沢ハイテクセンタープロジェクト」でした。クライアントからは彫刻を置いてほしいといわれていましたが、すでに用意してあったランドスケープデザインがあまりに過剰だったため、彫刻が良く見えないということで、ここにアートは不要でしょうと伝えました。つまり、美術品を置くということは、床の間にものを飾ることと一緒なんだと。床の間には余計なものがなく、軸と花と壺が置いてあり、それらを見たときにすべてがすっきりと良く見えます。そういう話を関係者にしたら、最終的にはランドスケープデザインそのものをアーティストに任せることになりました。
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都市にアートを持ち込む魅力 |
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1995年には「新宿アイランドアート計画」という大きなプロジェクトを手がけました。ここでは60年代の美術史を代表するようなアーティストを起用しました。新宿はオフィス街で、近くに都庁があり「公の場」というイメージが強い場所です。採用した作品はダニエル・ビュラン、ロイ・リキテンスタイン、ロバート・インディアナなど、すごくメジャーなものがそろっています。
当時、東京都現代美術館もオープンしたばかりで、それらの作品を常時展示している美術館がなかったことから、現代美術の巨匠を一般の人たちの目に触れさせる場をつくってみようと考えました。しかもパブリックアートでも、ある観点からキュレーションできることを実証してみせたかったのです。
単純に買ってきて置くだけというのではなく、あるコンセプトに基づいて全体をパッケージ化する、 |
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