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車で20〜30分のところに有名な和倉温泉があり、そことタイアップして成功しています。地方都市で成功させるにはこうしたアイデアが必要です。 また、日本で成功要件を満たしているのが、横浜の山下公園を中心とした地域でしょう。大桟橋と山下ふ頭に挟まれる格好にある山下公園は、まさにボルチモアと同じスケールです。また、港湾にこれほどの緑があるところは世界でも珍しい。利用頻度も知名度も高く、複合的利用がされています。
海を知らない日本人
日本には4000もの港があります。国土交通省が管轄する港湾がおよそ1100カ所、農林水産省の管轄する漁港が2900カ所です。日本の海岸線の長さは35000kmですから、日本には海岸線8.7kmに1つ港がある計算になる。こういう国はなかなかありません。 ところが海に取り囲まれているのに、これほど海について知らない国民はいない、と海洋小説作家・白石一郎は言っています。ちょっと引用しますと、「江戸時代以前とそれ以後の日本人は、海のかなたへの好奇心や冒険心が違う。江戸以前ははるかに生き生きとしていた。海外に渡ったものは戻れば死罪という鎖国時代が  |
長く続き、海を嫌うことが伝統になり、国民性にまで及んだのではないか。日本中心の内向きの視点が身につき、国際感覚を摩滅させた。日本が外を向いたときは戦争で、まったく話にならない。それが今ようやく変わり始めたところかな。日本が海を介して外国とつながっていることを実感としてもっと意識しなければ」と中日新聞のインタビューで語っています。 欧米の産業革命を目の当たりにした明治政府は、国策として産業振興のために港湾や河川を特化させて、一般人が立ち入れない場所とした。そのことが今日まで影響しているのではないでしょうか。私は日本の教育現場で、もっと「海」について教えていく必要があると思っています。
地元と連携して海を守り、 海を知る
35000kmもある日本の海岸線をどうやって管理していくのか、おおよそ自治体だけではカバーできません。海は広大ですので環境面での影響が大きく、そのためNPOや地元住民の方による協力が必要になります。 重要なのは、役所と住民の役割分担を明確にすることです。私は海や海岸の民間利用をある程度認めることによって、今以上の環境管理が実現すると  |
思っています。例えばホテルのプライベートビーチのように、民間利用を促進させることで環境を守る方法などです。これまでの海の利用は漁業や海運がほとんどだったわけですが、今後の多目的で高密な海域利用を考えた場合、新たな管理方法が必要になってくるでしょう。 また、まちづくりに関連していえば、住民による歴史伝承や街案内などがあります。横浜に「横浜シティガイド協会」という、横浜の街を歩いて案内するボランティア組織がありますが、彼らは横浜に関するさまざまなマップをつくり、地元の人が横浜の歴史や魅力を解説してくれる団体です。長崎市が昨年から準備している「さるく博’06」も、地元の人たちがボランティアガイドとして長崎の歴史や文化を伝えるイベントで、より深い長崎を知ってもらえる内容になっています。 これからのウォーターフロントの課題は、周辺地域と連携し、お互いに足りないものを補い合い質を高めていくことです。そして、海に囲まれている日本だからこそ、人々に海や港を理解してもらわなくてはなりません。たくさんの人が港を訪れ、水に親しみ、もっと海を知り、自然への畏敬を抱くことで、美しい環境を次世代の子どもたちに残すことができると思っています。 |