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あわただしく通り過ぎてしまう人が多い。今後は魅力スポットにもさらに面的な広がりを持たせ、奥行きのある街にすることを目指している。 まちづくりに参加したときはまだ三十代前半だったという中野氏が、門司港にかかわってかれこれ20年近く。「まちづくりの街医者」を自認する彼の「いい街」とは? 「地元の人が街を誇りに思い、がんばっているからいい街なんです。観光客というのはそういう人たちとの交流を求めてくる。美しい街というのは、地元の人たちが維持している活動そのものが美しいのです。映画のセットのようなものはいずれ廃れると思っています。門司でも、ちょっとキッチュでもいいからレトロチックに、という話があったのですが、反対しました。門司港にある古い建物は当時の最高技術で造られている。そこに“まがい物”はないでしょう。観光客というのは何百万人が訪れても、一過性のものです。10万人の地元の人のほうが経済効果はあります。ですから地元の方々が快適だと思えるデザインをしていく必要があり、それが結果として観光にもつながっていくと思っています」
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2002(平成14)年、新しく創設された土木学会の「景観デザイン賞」で、門司港レトロ地区環境整備が満場一致で最優秀賞を受賞した。歴史的建造物や自然環境など資産を生かすための環境デザイン手法、レトロをキーワードにした歴史に耐える本物志向のデザイン、地元市民が継続してまちづくりに参画し快適な歩行空間・水際空間をつくりあげた姿勢、などが高く評価されたのである。 地方がますます厳しくなっていく時代、いかに街の資産を発掘し価値を高めることによって、住民が誇りに思う街を育てるか。地方のまちづくりはこれからが本番だ。
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[上左]親水広場 [上中]海峡プラザのにぎわい [上右]JR門司港駅前レトロ広場の噴水 [下]海峡プラザ前の休憩施設。テーブルとベンチは市が設置した
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