情報誌「ネルシス」 vol.8 2007

P-28 ストーリーが育まれるまち…枝川公一
P-32 Project File[プロジェクトファイル]

P30-31
目次
建物が移動するエキシビション ノマディック美術館
2007年春、お台場の空き地に152個にもおよぶ鉄製コンテナが積み重ねられた。それは、アーティスト、グレゴリー・コルベールによる作品展「Ashes and Snow」のための美術館。
 遊牧を意味する「ノマディック美術館」は、その名のとおり世界を巡回している。そのこと自体は珍しいことではないが、ほかの展示会と何が違うのかというと、作品だけでなく展示場である建物も移動してしまうのだ。作品展が世界を旅するごとに、訪れた港でコンテナを調達し組み立てる。まるでサーカス小屋のように、何もなかった空間にノマディック美術館が出現する。それは「決してひとつところにとどまることのない環境をもたらす持続可能な建造物を創る」という構想によるもの。ニューヨークで初めて披露され、

その後、サンタモニカへと移動し、東京では2007年3月11日から6月24日まで開催された。
 この美術館の設計をグレゴリー自身から依頼されたのが、世界的に活躍している建築家・坂茂氏である。青い空に映えるカラフルなコンテナが積まれた外観とは対照的に、内観は薄暗く、通路の両側には円柱が並び、神殿を思わせる厳かな雰囲気が漂っていた。
回廊の両わきには作品が展示され、野生動物と人間との交流をとらえた写真が見る人を驚かせる。建造物による内外のギャップと想像を超えた作品とで、訪れた人を神秘的な世界へと誘う不思議な空間が生まれていた。
 次の巡回先はメキシコ・シティ。2007年12月15日から2008年4月27日まで、ソロイカ広場で開催される。


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